長崎市青山町の私道通行止めした不動産屋が不利?通行料以上のリスクを宅建士が解説

どうも、不動産屋&不動産投資家のたふい(@kizuki_fudousan)です。

本日ニュースを見ていたら、長崎市の私道通行止めの問題で一方的に不動産会社を悪にした報道がありました。

一般の人からして見れば、酷い話!!=不動産会社を悪にする気持ちも分かりますが、おそらく不動産会社に1度でも務めたことがある人だと・・・・

当たり前じゃね!?私道だし

って感じで、不動産会社が悪い訳では無く、むしろ私は前所有者が市に譲渡しようとしていたのにもかかわらず、「ガードレールが無い」などの理由で断った長崎市の対応が悪いんじゃ無いと私は感じております。

とはいえ住民からして見れば、今まで使えていた道路が使えなくなるのは死活問題。

では、この私道通行止めの問題で住民VS不動産会社はどっちが勝つのか?

今回は元用地仕入れで私道に泣かされまくった私が、実務経験&民法の見解を踏まえた上で、通行権の問題及び、長崎市が動かないことによる通行問題以上のリスクについて解説します。

注意

この記事では問題になっている福岡の不動産会社名を公開することはありません。(調べられますが)
あくまでも民法に考え方に則って発信している一個人の記事のため、正確性は保証できません。

たふい
最後にもお伝えしますが、持分無しの私道物件を購入すると痛い目にあいます。
通り抜け道路なので、長崎市も沢山の対処法があったにもかかわらず、お役所仕事しかしていないんだろうなって感じでした。あと、トレンドブログの記事=不動産会社が悪いっていう見解は違いますからね。

長崎市青山町の私道通行止めはおそらく住民が勝てる理由

早速今問題になっている長崎市の私道通行止めで住民が不動産会社に対して法的措置を使った場合、住民は私道通行が出来るようになるのか?

確実とは言えませんが、おそらく住民の要望が通り、通行止めが出来なくなると考えられます。

以下のツイートをご覧ください。

ツイートでお伝えしていますが、問題になっている私道は1960年代に開発された私道であり、そこから今回新所有者になるまでの間(50年以上)私道の所有者以外が通行利用しています。

ここでポイントになるのが地役権(通行権)の時効取得です。

地役権とは、一定の目的の範囲内で、他人の土地(承役地)を自分の土地(要役地)のために利用する物権のことをいいます(民法第280条)。

地役権の設定は、例えば、公道と自分の土地の間にある他人の土地(私道)を通行する目的で行います。

この権利は本来であれば、私道(土地)に登記する必要があるのですが、ここで時効が重要になる訳です。

私道所有者は全所有者の優しさから、50年以上通行をしてきている経緯があります。

この場合、第三者である住民が時効により地役権を取得したと考えられるのです。その時効条件はこちら

民法162条1項:「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

民法162条2項:「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」

20年以上、住民は通行できると思っていた=地役権を持っている意志を持って使っていたわけです。

故に現所有者の不動産会社が保有する前に既に住民側の地役権の取得が認められる=通行止めは出来ないと判断されると思われるので、不動産会社と考えられます。

 

とは言え、不動産会社も勝てないことは分かっていると思います。(狙いは別にあると思う)

不動産会社が通行止めで住民に訴えられたら、地役権の時効で負けることはおそらく分かっていたんじゃ無いかな・・・って考えてしまうんですよ。

1個人の宅建士が分かったレベルです。

法人でベテラン不動産営業マンや顧問弁護士がいる不動産屋が住民に悪意にサラされるリスクを追ってまで今回の踏み切ったのには2つの理由があると推察しています。

福岡の不動産会社の狙い
  • 私道の所有者として住民に伝えたかった。
  • 長崎市を動かさざる得ない状況にしたい。(買い取らせたい)

1つずつ解説していきます。

私道の所有者として住民に伝えたかった。

 

約1200坪もある私道の維持費や管理は想像以上に高いですし、大変です。

今までなあなあにしてきた私道に対して、いい加減に使われる(私道に自転車を止める・ゴミを捨てる・勝手にアスファルトを掘る)などの行為をさせない為のパフォーマンスじゃ無いのかなって思います。

要は管理しやすい&100世帯以上回って私道の新所有者として伝える為だったのか?

私道の所有者である以上、クレームは全て不動産会社に回うわけです。

これだと不動産会社だって溜ったもんじゃありません。

そんなところじゃないでしょうか?(これも地味に大事です)

長崎市を動かさざる得ない状況にしたい。(買い取らせたい)

一番はこれ。

不動産会社が買い取った私道を長崎市に対して早く売って、利益確定させたいわけです。

不動産会社からしても、通行料が取れない以上、当分の間はずっと金食い虫私道になりますからね。

 

しかし、不動産会社単体で買い取れ!って言っても長崎市は動いてくれないわけです。

ここからは予想になりますが、税金を払っている住民を通行止めという形で巻き込み、最終的には【不動産屋&私道隣接所有者VS長崎市】という構図にする布石ではないかと考えております。

住民が動けば、長崎市も動かざる得ませんし。

あと、住民からして見ても不動産会社が持っているより、市役所が所有することで私道から公道に変わり所有している不動産の価値がUPするわけです。

私道も袋地ではなく、開発道路で通り抜けが出来るので、公道にすることは容易なはず。(1項2号辺りでいけるんじゃね。)

42条1項2号 都市計画法(開発行為など)・土地区画整理法等の法律により造られた道路

今は【住民VS不動産会社】ってなっておりますが、通行止めが終わったら【不動産屋&私道隣接所有者VS長崎市】でしょう。

注意!道路の考え方について
長崎市の建築条例までは分かりません。また道路幅員が4m未満がある場合、2項道路になる場合もあり得ます。

私道の金額はどれくらいになる?路線価から考察

私道が1200坪㎡数にすると3963㎡(約4千㎡)もあるわけです。

現地の路線価を調べて見ると、私道なので金額はありませんでしたが、私道に接続している一番近い路線価格72,000円を基準に計算してみます。

ざっくり計算すれば、4,000✕72,000円=2.88億と馬鹿高い金額になる訳ですが、単純計算では無く減額補正を入れるべきです。

この場面に通常は使わないのですが、国税庁の私道の相続税評価を使って考えていきます。

路線価方式による場合の評価方法
私道の価額は、原則として、正面路線価を基として次の算式によって評価しますが、その私道に設定された特定路線価を基に評価(特定路線価×0.3)しても差し支えありません。
(算式)
 正面路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率×0.3×地積=私道の価額

私道の評価を30%と考えると、2.88億✕30%=8,640万程度。とは言え、舗装費などの維持費が掛かりますから、そこから指値しても

6,000万~8,500万ぐらい

になるのでは無いのでしょうか?

まあこの金額で市は買い取れるのか?って疑問が湧きますが、不動産会社も持っていても仕方ない道路なのでもっと安く売りさばく可能性もあります。

たふい

不動産会社も買い取っている手前、譲渡するとは考えられません。(現に維持費関連で住民と揉めている以上無料で譲るとは考えられない。)

市も公道に通り抜けが出来る道路なのですから、トラブルになる前に貰っておけば・・・って感じです。

では長崎市が仮に私道を買い取らなかった場合どうなるか?
住民は通行止め以上に厳しい現実が待っております。

長崎市が私道を不動産屋から買い取らない場合の通行権の問題以上のリスクとは?(無い事を願う)

 

通行権が取得でき安心ではありません。

今度は私道所有者が建て替え時のライフラインの接続の際に私道を掘る掘削承諾書が取れないという問題です。

これは本当に恐ろしい。

不動産会社同士で揉めるぐらい大問題であり、建売業者は掘削承諾書が無い私道の土地は買わないです。

 

仮に通行の問題が解決した後に、建て替え時のライフラインを埋設するために道路を掘る際に私道の所有者(不動産会社)に許可の判子を貰わなければなりません。

この判子が通行権以上のリスクと言えます。

不動産会社が、「通行料を払わない人には判子押さないよ!」「判子代100万ね」って言う可能性は十分にあり得るわけです。

たふい
印鑑証明書&掘削承諾書を貰うのに100万よこせ!いう隣人がいる買い取り案件を調査した事があります。

 

私道所有者からして見れば、道路を掘られる=傷つけられる事になりますから、維持費の為にタダで押してあげるわけにはいかないのが実情でしょう。

ちなみに掘削承諾書が取れない物件は、住宅ローンがNGになるのが殆ど。(てか無理)

つまり売却することも難しくなりますし、住民が所有する不動産の価値は恐ろしく下がります。

 

長崎市はこれらの事を予想しなかったのでしょうか?

正直私には疑問ですね。

たふい
100世帯ほどあるようなので、100万✕100世帯で最大でも1億。通行料が取れ無い場合は掘削承諾書で揉めると思います。

 

長くなりましたが纏めます。

まとめ:持分無しの私道物件の購入は危ない。長崎の私道問題から住宅購入を考えよう。

長崎市青山町の私道通行止めの問題を見て、改めて私道の物件は難しいな・・・って思ったのと同時に、私道持分無し案件はやっぱり怖いです。

私道持分無し案件は私道負担0であり、値段も恐ろしく安いので建物に拘りたい注文住宅購入者が手を出しがちな物件ですが、将来ほぼ確実に揉めますのでオススメしません。

私道の物件を購入する際は、必ず持分がある物件を購入しましょう。

そして可能な限り建売業者が建てた分譲地=所有者がほぼ同時で既得権益がない状況がベスト。

土地探しでは日当たり・値段・立地も大切ですが、それ以上に前面道路を意識するようにしましょう。

今回は以上です。

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